『作家と一日』 吉田修一
2021/12/29
作家と一日
吉田修一
分類: 914
ANAの機内誌の連載が本になったものだそうです。
コロナで思うように旅行も行けない今だからこそ読むと楽しいんじゃないかなと思います。
というか、タイトルだけ見た時はもっと、「作家のエッセイ」と言う感じかと思ってました。
まあ確かに、文字通り作家のエッセイではあるんですが、作家ってこと自体はたいした意味を持っていないなっていう感じ。
それはとにかくとして…めちゃくちゃ面白かったです。
連載をまとめたものなのでひとつひとつの話は短くて、長くても5ページくらい。
特に印象に残ったものを紹介しますね。
月夜のダイニング
筆者がタイで経験した夢の中にいるような旅行の話。
書き方がうまくて、本当に夢の中みたいなんです。
レストランでボーイがふっと現れてふっと消えるところとか…
そんな夢だけでもみてみたくなる、とても素敵な話でした。
いい風を知ってますねぇ
気持ちの良い場所を探すプロの話。
筆者の友達とか、猫とか。
たしかにそういう人っているなあ、と納得しました。
なんかいっつも気持ち良さそうにしてる人はたいてい、自分の居場所をすぐに見つけるんですよね。
そういう人はきっと「いい風」を読めるんでしょうね…いいなあ。私も探してみます。
豆乳、揚げパン、牛肉麺!
とりあえず…この作者の方はほんとに台湾が大好きなんだと思います。
これまでのふわっとしたエッセイじゃなくて、突然めちゃくちゃ具体的な話になります。
次から次へと出てくる店の名前、町の名前、食べ物…もうただの観光ガイド。
そんなところも面白くてこの話大好きです。
この人に台湾の紀行本とか書いて欲しいなあ…絶対それ持って台湾行くのに。
そして読んでるととにかくお腹が空いてきます…タイトルからも分かる通り食べ物の話ばっかりなので。
三朝の湯で願う
体にガタが来始めた友人と、湯治にいく話。
三朝は「みささ」と読み、鳥取にある温泉街なんだそうです。
正直に言うと具体的な話の内容は忘れてしまったんですが…
はっきりした目的も予定もなくぼんやりと温泉に浸かって過ごす時間が、なんだかすごくいいなあと思ったことは覚えています。
これ読んでると、旅行に行きたいな、とすごく思います。
それぞれの話がキラキラしてて、非日常って感じがしてすごい楽しい。
飛行機の中で青い空を見ながら読んでいる気分になれます。ほんとに。
でも人によっては余計に旅行行きたくなって悲しくなるかな…?
いや、でもエッセイ自体が面白いのでそれだけでじゅうぶん楽しいと思います。
それに、遠出するってだけじゃなくて、ちょっといつも行かないような道とか街とかに行ってみるだけでも楽しいかも、とも思わせてくれます。
今回は図書館で借りたけど、これは買ってちょくちょく読み返したい……