あおい本棚

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『あるノルウェーの大工の日記』 オーレ・トシュテンセン

2021/03/31

ついこの間まで満開で綺麗だった桜も、気づいたらもう葉桜でした。春がきたんですね。

あるノルウェーの大工の日記

あるノルウェーの大工の日記

あるノルウェーの大工の日記
オーレ・トシュテンセン 牧尾晴喜/監訳
分類: 525


著者である大工職人が、屋根裏部屋の改築を頼まれ、その仕事を終えるまでの大工仕事の様子が書かれた本です。

主に毎週平日に作業をして、週末になってまた次の週を迎える。約半年ほどの作業がそうやって進んでいきます。
翻訳だからかもしれませんがわりと文は淡々としていて、でもたまに著者のちょっとユーモアを交えた人間味のあるところが見えて、なかなか面白かったです。

結構専門用語というか、具体的な部材や材質の名前とかも出てきます。そこを完全に理解しようとすると難しいかもしれないですが、そういうものがあるんだなって感じでさらっと読んでいると、そういうところで逆にこの本のリアルさが感じられました。

現場での仕事と、図面や紙だけでの仕事。建築士との間にもよくトラブルが起きるようで、やっぱり現場と理論の間の齟齬や軋轢は往々にしてあるものなんだなと思いました。その溝を埋めていくことはどちらにとっても永遠の課題なのかもしれません。

この本からは、大工という仕事の面白いところ、難しいところ、大変なところ、いろんな面を知ることができました。
仕事のシーンで何度も出てくるコーヒーブレイクや、施主の家族が施工中の屋根裏に上がって子どもがパネルに落書きするシーン、あと仕事終わりにバーやパブ、美味しそうな料理を食べにいくシーン。何気ない日々の繰り返しで、作業内容もこれといったオープニングやクライマックスがあるわけではないけど、そこがむしろ穏やかで、落ち着く本でした。

なんかこういう仕事関係のエッセイとかって、読んでるとやってみたくなるんですよね…工作とか好きだから、余計に。
もちろん、大工の仕事は体力的にも厳しいと思うし、仕事の割り振りや手順、事務仕事など、この著者のように自営業でやっていれば特に、やるべきこと考えることは山のようにあります。きっとそれなりの覚悟を持ってやらなければいけないと思います。一人前になるための努力も相当必要なんじゃないかと感じました。

でも、夢がありますよね。自分が本当にその手で作ったものが誰かの大切なものになるんだって思うと…いいなあ。
それに、キツいところだって、きっとたいていの仕事はそんなもんなんじゃないかと思います。まだ社会に出てもいないですが。

この間まで家の近くで新築が建てられてて、工事中の現場を近くでみたいなあとずっと思ってました。いつも通るたびにちらっとは見るんですがあんまり中の様子が見えないんですよね。
つい先日そこのブルーシートとか覆いとか柵とかが外れて家の全貌が見えたんですが、なかなか立派な家でした。中がとても気になります。
そこの家の人と仲良くなれたりしないかな…
そんなことを思ってたからこの本が目についたのかもしれません。