『人間たちの話』 柞刈湯葉
2022/08/19
人間たちの話
柞刈湯葉
分類: 913
SFの短編集。
ちなみに作者さんの苗字は「いすかり」って読むらしい。
そして内容は…めちゃくちゃ面白かったです。
シュールで一見すると温度感がないSFの感じが最近楽しくなってきた……
どれも面白かったんですが、「たのしい超監視社会」は、やっぱり元ネタが分かるので楽しかった。
これはどっからどうみても「1984年」のパロディ?というのかはわからないんですが、同じ世界観の中での話。
「1984年」では、オセアニア、イースタシア、ユーラシアの3つの勢力で戦争をしていて、その中のオセアニアが舞台。
それに対してこの話では、イースタシアが舞台になってます。
たしかにイースタシアではこんな感じだったのかも…とか考えるとなんだか不思議な感じです。
三分間ヘイティングとか、電幕とか…いや、オセアニアと対して変わらんやん、とちょっと思いました笑
そんな世界で生きる、主人公・薄井たちの世代は、すっかりその状況に適応していて、うまく電幕をあしらう方法だとか、盗聴に引っかからないよう言葉の区切りを変えて話す方法だとかをネイティブとして身につけています。
世界が変わればそれに適応していくもんですね、やっぱり。
そして「自由」の概念も変わっていきます。
薄井たちにとっての「自由」は、昔の人、現代にとっての「自由」と違うから、不自由さに気づかない。
気づかないというか、不自由ではないのかな。
人間は適応する、ということをとても痛感しました。
それはこの話だけじゃなく全体を通して思ったことでもあるんですが……
あと面白かったのが、「宇宙ラーメン重油味」。
宇宙でラーメン屋をやる人間の話です。
スープに重油とか…スケールが違いすぎて新感覚な話でした。
舌触りのいい油とはいったい……
そういえばこの作者さん、「横浜駅SF」の人だったようです。
そっちも面白いので是非!