『未来』 湊かなえ
2021/10/07
未来
湊かなえ
分類: 913
※この記事は「未来」のネタバレを含みます
あけましておめでとうございます!
新年一発目は(読んだのはだいぶ前だけど)、湊かなえさんの「未来」です
子どもの貧困、という帯を見て買ってみた本。
語り手が何人かに分かれて進められていく形式になっています。
小学生の章子(あきこ)のもとに、未来の章子と名乗る人物から手紙が届きます。
遊園地であるドリームマウンテンは今は10周年のはずが、30周年の記念グッズが同封されていたり、内容が自分か亡くなった父親でしか知らないような内容を含んでいることから10歳の章子はそれを未来からの手紙だと信じます。
そこには、未来は明るくて、今は幸せにやっているから安心して、というようなことが書かれていました。
章子の母親は、父が亡くなったことで心のバランスを崩し家にこもっていました。
父方の祖母から母親の過去を聞かされ母と離れるように言われても、母を守ろうとそれを突き放した章子。
そうやって前を向いて生きようとしていた章子と母は、新しく赴任した担任や、その後母が付き合うようになった早坂という料理人などが原因で次々とトラブルに巻き込まれます。
学校で酷いいじめに遭い、不登校になり、同じように不登校の仲間たちを見つけるもその友達も事件に巻き込まれ、特に仲の良かった亜里沙の弟は自殺します。しかも、その原因は亜里沙の父親だった。
これでもかというくらい困難に直面した章子と亜里沙のふたりは、とうとう、最後の手段を取ることにします。
救いのない最後になるんじゃないかと思っていたけど、タイトル通り、ちゃんと未来がある終わりで、ほんとによかった。
こう言う現実は、特殊なものかと思えるけど意外とそうじゃないのかもしれない。結構そこらじゅうにある話なのかもしれない。
ここまでじゃなくても、程度の差こそあれ貧困に苦しむ人、子どもはたくさんいるんじゃないかと思いました。
それにしても、母の過去、担任の林先生や早坂、父の真実、智恵理の事件や亜里沙の弟の自殺、こんなに絶望することばかりなのに、折れずに諦めなかった章子ってすごすぎる。
そんな日々の中にも小さな幸せがあったからなのか、お母さんを支えたいという思いがあったからなのか……
この本を読んで思ったのが、未来は輝いている、それだけじゃ足りないんじゃないかってことです。
いくら未来が明るいから信じてと言われても、今が耐えられないほど苦しかったら意味がない。
ちょっとタイトルとは反するかもしれないけど…未来とか将来ばっかりじゃなくてちゃんと「今」を救えるようになったらいいなと思います。
まずは自分がそのための努力をしなきゃですが!