あおい本棚

主に本、たまに漫画や映画の感想です

『望み』 雫井脩介

2021/10/06


望み
雫井脩介
分類: 913




映画化もした作品です。読む前と読んだあとだとなんか予告編が若干違って見えました。



一登(かずと)は個人で住宅設計の仕事をしていて、妻と子ども2人とともに自分の設計した家で暮らしています。
息子の規士(ただし)は高校生で、外泊や夜遊びが目立ってくるようになっていて、一方娘の雅は高校受験のための勉強をしっかりこなす「いい子」。

そんな時規士がある日、無断外泊をしたあといつもなら戻ってくる頃合いにもかかわらず戻ってこないということが起きます。
心配する2人でしたが、そこに飛び込んできたのは規士の友人が遺体で発見されたというニュース。
しかも犯人は複数人で、その事件に規士が関わっている可能性も浮上します。

事件のことでわかっているのは、あともう1人、誰か殺されているということ。

被害者なら、殺されている。
加害者なら、生きている。

そのふたつの選択の間で、家族は悩みます。

父親である一登は被害者であることを望み、
母親である貴代美は加害者であることを望みますが……



最初に発見された同級生が仕事関係の知り合いの親戚だったことから、初めは加害者かもしれないと思っていた一登は段々と被害者の方に傾いてきます。ここはだいぶ分かりやすい感じでした。
加害者だった場合今後の仕事が立ち行かなくなるかもしれないという思いが影響したみたいです。

そしてもう一つ鍵となるのがナイフ。
規士がかつて購入し、それを見つけた一登が取り上げて仕事場の机にしまっておいたナイフが、そこから無くなっていたんです。
そのナイフの行方も、両親の望みと規士の事実を大きく左右することになります。

一方の貴代美は、たとえ加害者であったとしても生きていて欲しいと強く望み、そのことから一登と衝突します。
妹の雅はネットやメディアの情報に振り回されながら、どう考えたらいいか分からなくなっていきます。

どちらを望むのか、どちらかを望んでいいのか。



最終的にどちらなのかの決着はつきます。
私の予想とは反対で、なんというか…どう受け止めていいのか分からなかったです。
これまでの経過があるから、よくある推理小説とかみたいには向き合えなくて…こういうのは初めて。

望むと、信じるって、どう違うんでしょうか。
この家族のこれまでの過去からも、いろんなことを考えて想像してしまう話でした。
いやー重い。でも好きです。


映画も見てみたいけど、最後のシーンがみたいような見たくないような。