『失われたものたちの本』 ジョン・コナリー/田内志文
2022/03/27
失われたものたちの本
ジョン・コナリー/田内志文(訳)
分類: 933
舞台は戦争中のイギリス。
主人公は12歳の少年デイヴィッドで、病気で母親を亡くしますがその後父親が再婚。
再婚した義母、そして生まれた義理の弟とうまく付き合えず、悩む日々を送っています。
そしてある日、デイヴィッドは死んだはずの母親の声を聞いて家の庭から不思議な空間に迷い込み、そこから抜け出すために冒険をすることになります。
と、めちゃくちゃざっくり言いましたが、冒険が始まるまでの間もほんとは色々あります。
デイヴィッドが迷い込んだ世界は、ちょっとずれたおとぎ話の世界。
なぜ「ちょっとずれた」かというと、おとぎ話に出てくる設定に似ていて、シンデレラなんかも出てくるんだけど、なんか違うんですよね。
シンデレラはブサイクだし働かないし小人を虐げるし、赤ずきんは狼に恋しちゃうし…そこから「人狼」が生まれ人間との間に対立が生まれます。
この「人狼」が一番印象に残っているかもしれません。
人狼は狼を従えて見た目も狼のようでいて、でも人間のように振る舞うことに誇りを持っている。
だけど人間に近づくことで失う大切なものもある。
なんかそういうのが哀しいというか、すごく考えさせられるというか……
こういう哀しい生き物を生み出したくないなととても思いました。
デイヴィッドは人狼から逃げ、さまざまな人に出逢いながら、元の世界に帰るため、「失われたものたちの本」を探します。
この本はたぶん、好き嫌いが結構分かれると思います。
ちなみに、私は好きです。でももう一回読みたい。消化不良な感じがあるので…
子ども向けっぽいけど内容はわりと重いし残酷な描写もあって、特に日本では子どもが読むものじゃないかなあと思いました。
そもそも子どもにはよく分からないことが多いような気がします。
ダレンシャンとか、はてしない物語に似てるかも。
私がこれまで読んだ英米児童文学ってよく考えたらだいたいダークな内容ですね………
日本の児童文学に慣れた身としては、最初に読んだ時、こんなあっさり人が死んだりするのか、とか、こんなドロドロした家庭事情も出てくるのか、とか、結構驚きました。
というわけで、好みが分かれるかもしれませんが内容は深いし不思議な魅力がある本です。ぜひ!