あおい本棚

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『サブマリン』 伊坂幸太郎

2021/09/13

サブマリン
伊坂幸太郎
分類: 913



読み終わってから気づいたんですが、どうやら続編だったらしいです。
ただ前のを読んでなくても全然楽しめたんですが。


武藤と陣内は家庭裁判所調査官。家事事件や少年事件、少年のその後などを調査する仕事です。
陣内は武藤の上司ですが、いつも無気力でふざけた発言ばかりしています。けど、こういう人ほど実はちゃんと見てたりするんですよね。


武藤はある日、棚岡佑真という、無免許で事故を起こし人を死なせてしまった少年の担当となります。
陣内に棚ボタくんと呼ばれるようになった彼は、事件についてほとんど何も語らず、聴取は難航。
そこで武藤が彼の過去を調べると、両親、そして小学生時代の友達が交通事故で亡くなっているということを知ります。
果たして、棚岡佑真の事故の真実とは……


帯のあらすじっぽく書くとこんな感じでした。
少年犯罪がテーマとなっているのは明らかですが、陣内と武藤のやりとりが軽くて、普通に少年たちの前でもふざけたりするからこっちがヒヤヒヤするくらいです。それもあってか、内容の割には重すぎる雰囲気になってないように感じました。


話の中では他にも過去に少年犯罪を犯した人物が出てきます。
飄々とした雰囲気で、観察下にあっても大人に対して余裕を持った態度を取る小山田俊。
事故を起こした自分を責め、償い続けている若林。
彼らそれぞれに考えがあって経験がある。


やられたら、やり返していいのか。
罪はどこまでいけば償われるのか。
そういうことについて色々と考えさせられる話でした。


ドラマ『アンナチュラル』の中で、中堂さんが、

"人を殺す奴は殺される覚悟をするべきだ"

って言ってました。それもそうなんじゃないかって、私は思ってしまいますけど。
でも、もちろんそれと殺人を肯定するのとは別の話です。
それだけの覚悟を持っていれば人を傷つけてもいいのかと言われればそれも違うような気がするし。

少なくとも、棚ボタくんは、ある程度の傷つける覚悟も、そして傷つけてしまった人への懺悔の念も持っていたと思います。


前作の『チルドレン』のほうも、早めに読んでみたいです。