あおい本棚

主に本、たまに漫画や映画の感想です

『これからの図書館』 谷一文子

2021/04/05

これからの図書館
谷一文子
分類: 010

なんとなく、面白そうだなと思って図書館で借りてみた本。

私は本は図書館で借りて好きなものだけ購入するという感じなんですが、この本を読んだ後だと、普段よく行く図書館を見るのもなんだか楽しみになってきました。

図書館への導入から始まり、「つくる」、「つかう」、「かわる」、「たのしむ」を中心に図書館について紹介されています。


この本を読んで一番思ったのが、図書館の財産って、「知識」と「人」だなってこと。

たくさんの本や雑誌、CDなどのメディアまでも、いろんな出版物を収蔵しているから、「知識」というのは当たり前かもしれません。
でもその「知識」にも図書館によって差があるのが面白い。
もちろん蔵書数の差という見方もあるし、あとは地域差。
図書館は新しい本を際限なく買うことは出来ないですが、郷土資料についてはその限りではないそうで、積極的に地域にまつわる資料を集めているようです。図書館ではその地域に関わる資料が多いと感じるのはだからなのか、と納得しました。

あとは「人」。司書さんって、本当に大切な役割を果たしているんだと知りました。
これまで、レファレンスはほぼ使ったことがなかったので、思いつく仕事といえば書架整理と貸出・返却受付くらいだったんですが、そのほか企画を考えたり主催したり、学校や病院、他の図書館など様々なところと連携したり。工夫を凝らしていることがよくわかりました。

個人的に好きだったのは、ぬいぐるみのお泊まり会。子どもたちはぬいぐるみを持ち寄って昼間読み聞かせをする「おはなし会」に参加し、ぬいぐるみだけを残して帰宅。
図書館に一晩お泊まりさせて、夜の間に動き出すぬいぐるみの様子を撮影し、子どもたちにその様子を見せるという企画です。ぬいぐるみが興味を持った本など、いろんな角度から本を子どもたちに紹介する機会にもなります。
これがもうめちゃくちゃ可愛い。こっそり夜の間に抜け出して暴れたり本を読んだりするぬいぐるみ達の写真も、それを撮影している司書さんたちも想像するとすごくかわいいです。まるでトイストーリーみたいで、子どもたちがすごく楽しめる企画だなと思いました。

図書館は、最近だとビルや建物のワンフロアなどに入ってる場合も少なくないですが、そういった複合化だけでなく、「融合化」というのも進んでいるそうです。図書館の入ったビルで、本を図書館エリアだけでなく、それぞれのブースに合わせて近くに配置するとか。
「学ぶ」というのも図書館にとっては重要なテーマで、図書館で行われているセミナーなども、そのうち行ってみたいなと思うようになりました。


図書館の果たす役割はおそらくとても広くて、限界がないものなんじゃないかと思います。
万人に開かれているもので、しかもあらゆることに関わる資料を揃える必要がある。今は読書離れとも本離れとも言われているから、こういう状況をどううまく切り抜けるかということにも力を注がなければいけません。
司書の人も決して給料だって高いわけじゃないだろうし、先日読んだ「図書室のキリギリス」で触れられていたように、より良い司書になるための制度や環境が整えられているとは言えないのかもしれません。

それでも、少なくとも私にとっては、夢があるな、と思います。図書館司書も、図書館自体も。
デジタルかアナログかに関わらず、本や知識は人と人、人と世界をつなぐものだと思っているし、図書館は一番それを身近に実践できる場所なんじゃないかと思います。
空間的にも、図書館の本に囲まれた独特な雰囲気ってすごく落ち着くんですよね。夏休み明けに学校に行きたくない子のために、図書館側が、居場所があるよと呼びかけたこともあります。そういうところでも救われている人がいたらいいな。

私はやっぱり本好きなので、本がたくさんある空間ってだけでもうワクワクするんですけど。
本屋さんとは違う蔵書や雰囲気もすごく好きです。「売る」ための空間とはまた違う感じ。
そのうち全国の色んな図書館、本屋さんとかをめぐってみたい。そしたら行ってみた感想もまた上げたいなと思います。