あおい本棚

主に本、たまに漫画や映画の感想です

『よろこびの歌』 宮下奈都

2022/02/17


よろこびの歌
宮下奈都
分類: 913


有名なヴァイオリン奏者の娘、御木本玲(れい)。
音大の附属高校に落ちて進んだのは、まだできたばかりの女子校でした。


高校のイベント、合唱コンクールをきっかけに、その教室の中で起こったそれぞれの変化を描いた群像です。


合唱コンクールを通して絆を深め、最後には素晴らしい合唱を披露する!

というものではなく、コンクールはただのきっかけであり、序盤であっさり終わります。


玲は付属校に落ちてから、高校生活に何の意味も見出せず、機械のように学校に行き帰るという生活を送っていました。

自分の周りに膜を張るようにして過ごし、クラスメイトともほとんど話さない。

でも親がヴァイオリニストであるという理由から合唱コンクールの指揮者に選ばれてしまいます。

そのコンクール自体は微妙な感じで終わるんですが、それをきっかけに、少しずつ、玲や他のクラスメイトに変化が起こります。

玲の音楽に魅せられた子、コンクールの時の指揮者としての玲に不満があった子、クラスのまとめ係…などなど。


自分には何もない、とそれぞれ自分では思っていたけど、他の子の視点から見るとそんなことなくて、みんな何かしらちゃんと持ってるんだな、と感じました。
それぞれ悩みとか不安を抱えながらも未来に向かって歩く話。


何か目に見えてすごいことが起きるわけじゃないけど、でもそれぞれにとっては確実にこれからも大切な瞬間になる場面がたくさんあって、青春だなあーと眩しくなります笑

音楽ってすごい。
すごくなさそうにも見えるのにすごい。

宮下奈都さんの音楽的な表現ってすごい柔らかくて綺麗で、幻想的な雰囲気になれる気がします。
羊と鋼の森ももう一回読みたいな…