あおい本棚

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『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』 山本高樹

2022/01/08

冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ
山本高樹
分類: 292



ザンスカールの奥地で行われる冬の祭礼を記録に残すため、極寒の中を旅をした1ヶ月の記録です。

そもそも、ザンスカールってどこ?って感じだったんですが…
インドの北部で、紀行文でたまに聞くラダックの近くでした。カシミール地方とかもこのあたり。


この山奥にあるザンスカール地方のさらに奥地で行われるプクタル・グストルという仏教の祭礼。

冬に行われるこの祭礼に参加するには、ザンスカールの外側からだと、なんと凍った川を渡るという方法しかありません。

というわけで……友人の案内人とその甥と一緒に、山本さんはプクタルを目指します。


途中途中でトラブルもあったり、危ない場所もあったり、でもいろんな人と出会ったり家に上がらせてもらったり……
よそ者に対しても許容度が高い人たちが多いなあと思いました。
みんなすごく気安くしてくれるんですね。


読んでると、寒くて静かな風景がずっと頭の中に出てきます。
これ読んでいる時は真冬だったので、私もただでさえ寒かったですが、その何十倍も寒いだろうこの本の中の世界を想像してさらに寒くなっていました。

なぜか印象に残ってるのが、町で出会った子どもの写真。
ごく普通なんですが、その子の着ていたジャンパーにミッキーのワッペンがついていたのがなぜか印象的でした。

ここにもミッキーはいるんだなあっていうか……当たり前だけど、こういう場所も世界とちゃんと繋がってるんだということを感じて不思議な気持ちになりました。

これまでこういう世界の辺境にある場所をフィクションのように思ってきたから、かもしれないです。
本当に全く自分とは別世界のように無意識に感じていたけど、やっぱりそんなこともないんですよね。


極寒で厳しく、外界と離された世界。

でも舗装された道路が作られていたり、これまでより多くの人が訪れるようになったりと、この場所にも明らかに変化は起きています。

それが良いのか悪いのかはまだ分からないですが、ここに住む人たちにとってなにか良いことがあってほしいなと願います。