あおい本棚

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『夏への扉 新訳版』 ロバート・A・ハインライン/小尾芙佐(訳)

2021/09/30


夏への扉
ロバート・A・ハインライン/小尾芙佐(訳)
分類: 933

※この記事は「夏への扉」のネタバレを含みます!

映画化もした元祖タイムトラベルSF!

ちょっと話がややこしいんですが…簡単にまとめるとこんな感じです。


ダニエル(ダン)は発明家。
愛猫のピート、会社のパートナーであるマイルズ、秘書のベルと共にこれまで家事ロボットなどを作ってやってきていたんですが…マイルズと経営方針でもめてしまい、マイルズはベルと一緒になってダンを嵌め、会社から追い出されます。
そしてその頃この世界で行われていた冷凍睡眠、いわゆるコールドスリープをなかば強制され、30年間も眠ることになってしまいました。

30年後の2000年に目が覚めると世界は一変していて、ピートはいなくなり、親しくしていた少女リッキィに自分が最後に遺したはずの財産もなかったことになって、彼女の行方も知れなくなっていました。

また、2000年時点での歴史に、30年前の自分の記憶と食い違うところが多々あり、リッキィとピートを救うためと、その謎を解決するためにダンは開発中のタイムマシンを利用しようと考えます。


ダンは、純粋に好奇心旺盛な発明家です。いろいろ発明に夢中になってるうちに、婚約していたはずのベルはマイルズを操って、お金のためにダンを追い出してしまいます。
若干独りよがりなところもあるけど、まあ普通にいい人。
でも女の人を見る目はなさそう…最初に彼は自分を慕ってくれていたリッキィでなくベルを選んで婚約までしていました。


印象的だったのは、コールドスリープから覚めた後、ベルを訪ねるシーンです。
復讐しようという思いも抱きつつダンはベルのところへ行くんですが、そこで出会った彼女を見てその気がなくなりました。

30年経って、ベルは年老いていたんです。多少頭が回らなくなっているほどでした。
ほぼ歳をとっていないダンは、それを見てもう復讐は遂げられたと感じます。時間がじゅうぶん復讐をやってくれたってことかな。

ダンは歳をとってないからそう思うだけで、多分自分も同じように歳をとっていたら同じことは思っていなかったと思うけど…前と変わらない姿を見せつけたっていう意味では、たしかに復讐になるのかもしれません。


そのあとタイムマシンの存在を知ったダンは、過去に戻り、リッキィのもとへ行き、これからうまく行くように全部お膳立てして再びコールドスリープをします。

目が覚めたら自分と同い年くらいになったリッキィもいて、ピートもいて、お金も特許もあって、ハッピーエンド。
タイムトラベル系ってわかってたら展開が結構わかりやすい話でしたが、発表された当時は革新的だったんだと思います。
30年後の世界、2000年だけど技術がすごすぎてびっくり。
そして言葉の使い方とかが結構変わってきてるのもなかなか面白かったです。

最後の最後に2000年で目覚めた世界には、ハッピーエンドのダンと物語中盤のダンどっちもいるのかなーと思うと不思議です。
タイムトラベルっていっつもそのへんがすごい気になるんですよね。

この人がこうしなかったら今こうなってなくて、でもそれはタイムトラベルしたあとの出来事だから今の時点ではまだ「起こって」いなくて…とか考えてたらどこが始まりか分からなくなって頭がパンクしそうです。
実現していないから実際どうなるのかはわからないけど…

そういえばドラえもんの「のび太の大魔境」でも、「先取り約束機」という道具を使って同じようなことが起こってました。
未来の自分に助けられたのび太たちが、終わった後に過去の自分を助けに行くと言う話。
これも最初見た時わけがわからんかったな…
最初に来たみんなはどっから来たんだって思ってました。
無限に同じ出来事が繰り返されてるってことですよね、きっと。


ちなみにタイムマシンはその世界でもまだ公には実現していなくて、ダンが偶然知ったタイムマシンも過去か未来のどっちかに半々の確率で行けるという不確実なものでした。
結果的に過去にとべたからラッキーということで。こんな大事なところが運任せとは…

でもタイムトラベルしたあとのダンが過去で行った工作が、ちゃんと最初に2000年で目覚めた時にすでに反映されてたわけだから、過去に行けることは必然だったのかも…?