あおい本棚

主に本、たまに漫画や映画の感想です

『青くて痛くて脆い』 住野よる

2021/05/21


青くて痛くて脆い
住野よる
分類: 913


「君の膵臓をたべたい」で話題になった作者さんです。他にも「また、同じ夢を見ていた」とか「麦本三歩の好きなもの」とかも読みました。面白かったです。

イメージを塗り替えたいと作者さんが言っていた通り、なかなか衝撃的な話でした。ちょっと朝井リョウみたいな感じがします。でも、雰囲気っていうか書き方はやっぱりこの人なんだなあって思える。そりゃそうか。


あらすじとしては、簡単に言うと大学に入って出来た女友達と作ったサークル「モアイ」を、かつての理想とは全く違うものに変えられてしまった主人公の楓がぶっ潰すことを目指す物語です。

特に特徴のない地味系男子だった楓は、大学に入って、あるひとりの女の子、秋好と出逢います。
授業中に夢のような理想論ばっかりを主張する彼女と、成り行きから一緒にいることとなり、結果的に彼女の「世界を変える」という理想のためのサークルを一緒につくることになりました。

それから時間が経って、今。
四年生になって就活を終えた楓は、その頃にはもうモアイにはいませんでした。
かつてサークルの中枢で理想を掲げていた秋好を失い、楓はサークルを辞め、その頃には少しずつ人が入ってきていたモアイは、今では就活イベントなどコネクション作りの巨大サークルと成り果てていました。
ようやくひと段落ついて、改めてモアイのことを考え、このままではいけないと思った楓は復讐として、モアイを潰すことに決めました。


どこに向かうのか全然わからなかったけど、最後に畳みかけられました。えええ!?そういうこと!?って感じ。
あ、ネタバレはしないですがちょっとギリギリまでいくかもしれません。気をつけてください。

情報収集や潜入捜査をしながら、バイトの友人と共にモアイを潰すための探す楓。
なんていうか…もうすでにこの頃から、ちょっとおかしいなって思ってました。それはその話の内容っていうよりは、楓自身が。
大事な友達を失って、あとから入ってきた人たちにサークルを乗っ取られた、っていう印象なんですね。
でもそれにしてはなんかなあ……まあ読み終えたあともその謎は解消し切れたわけじゃないんですが。
秋好のための復讐っていうよりは、自分のエゴのためって感じがしていて、ちょっと痛いやつだとも思いました。最後にそれが加速します。

結局、何をしたかったのかなっていうのはよく分かりませんでした。ただ自分の理想と別の方向に行ってしまったのが、悔しかったのか情けなかったのか、妬んでいたのか、それとも寂しかったのか……「青い」から、かもしれない。

秋好のこと、好きだったのかな。恋愛には疎いので、いまいち分かりません。憧れではあったんだと思うけど。
途中、若いなーってなるところが多かった。なんとなく恥ずかしくて飛ばし読みしそうになったところもあります。
住野よるさんは、こういうのを青臭く書くのが上手いです。自分に酔ってる感じ。


正直に言うとラストの方はそこまで好きじゃなかったかな。
まさかまさかの事実はびっくりしたけど、院生の人の話とか、オチの方とか、消化不良って感じもするし…自分の理解不足もありますが。これが終わりかーってなってしまいました。

とはいえ、面白かったです。次はかくしごとを読んでみよう。