あおい本棚

主に本、たまに漫画や映画の感想です

『本と鍵の季節』 米澤穂信

2021/04/16

本と鍵の季節 (集英社文芸単行本)

本と鍵の季節 (集英社文芸単行本)

本と鍵の季節
米澤穂信
分類: 913


図書委員っていう響きに惹かれて読みました。
本を読むのは好きだけど、よく考えたら今まで図書委員だったことがないんです。主に美化委員ばっかり。
一回くらいやってみたかったなあと今考えれば思いますね…美化委員も楽しかったですが。


図書委員である「僕」こと堀川次郎と、同じく図書委員の松倉詩門のふたりが、ちょっとした事件の謎を解く話。
祖父の遺した金庫を開けて欲しいだったり、自殺した同級生が最期に読んだ本を知りたいといった依頼や、ふたりで訪れた美容院での不自然な対応。そして最後に、松倉の家族に関わる「鍵」の話。


最後の「鍵」の話もなんとなく後ろ髪を引かれる感じだったけど、個人的には自殺した同級生が読んだ本を探す話が印象に残りました。
本を探す彼のやりきれない思いが、最後に真相がわかったときに一層強く感じられます。
これが自分だったら…と思ってしまいました。
「僕」の言葉も、正解じゃなかったけど間違ってもいなかったと思う。
私はきっと彼に対してこんなに誠実に向き合えないなと思いました。

必ずしも「本」がメインの謎ではないけど、「本」に関わる二人の姿勢が感じられる話でした。
なんでも話して報告するような間柄じゃないけどちゃんとお互いを信頼していて頼ってる、なかなかいいコンビです。


それにしても…「僕」と松倉はとても賢くて聡明で機転も利いていて、なんか憧れました。
高校生らしいところもちゃんとあるけど。
こういう友達がいたら面白そうです。